<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第17章 東大寺 ― 姫&安土城武将 ―
信長様は更に私に問う。
「とうだいじ?」
「三成、教えてやれ」
私がわかっていないとわかると、信長様が三成くんに言い、三成くんが教えてくれた。
「蘭奢待の蘭の字の中に東の漢字が有ります。奢の漢字の中には大が有ります。そして待の漢字の中には寺が有ります。だから東大寺、なんですよ」
「…へぇ、そうなんだ…」
私は改めて、信長様のほうを向き、礼を述べる。
「信長様、貴重な香りを聞かせてくださってありがとうございます」
「ほう、少しは香に興味を持ったか」
「はい、こんな素晴らしいものがあるなんて知りませんでした」
「そうか、では政宗から香の指導を今後、受けると良い」
にやりと含みのある笑みを浮かべる信長様の表情に、すっかり私と政宗の間に、何か有ると思われてる、と私はさすがに気付く。
片付けの手伝いをしながら、香道について政宗から話しを聞く。
話しを聞きながら、丁寧に道具を片付け終わると、政宗はおもむろに私が道具を仕舞った棚に私を両腕で囲い、透明な青い瞳を光らせて私を見下してきた。
「さ、じゃあ、香を振る舞った御褒美をもらおうか?」
「ご、御褒美?」
反論する間もなく、政宗の唇が私に触れ、一気にからだが甘い感情に満たされる。
ずるいよ、政宗…
蘭奢待の残り香がくゆるその部屋で、私はそのまま政宗に支配されていった…
<終>