<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第179章 冗談と本気 ― 幸村&姫 ―
「いえ、ちゃんと二人で話します。信玄様にお手を煩わせるわけにはいきません」
なんだ、ちゃんとわかっているな。
「しかし幸村には本当にもったいないなぁ」
舞がなんだかんだ言っても、やっぱり幸村の事を理解している事をうらやましく思う。
「どういう事ですか?」
きょとんとする舞に、俺はふ、と笑みをこぼす。
「天女から愛される幸村が幸せ者だな、とつくづく思ったよ」
俺が言うと、舞は顔を赤らめる。
「もう…だから信玄様、そういう事言うの恥ずかしいから止めてくださいっ」
本当の事だから仕方ないだろう、俺を見てくれていないのが残念だ。
おや、幸村がこっちを見ている、と俺は幸村の赤い着物姿に気付きいたずらする。
「舞、まつげが抜けているな、取ってあげよう、目をつむって」
「え、本当ですか?申し訳ありません、お願いします」
急いで目をつむる舞に、まつげを取る振りをする。
天女の顔に近付き、何ならこのまま口付けして良いくらいなのだが、まつげを取る振りをすると、幸村が慌ててこちらに来るのがわかる。
「舞!」
「…え…?幸村…?どうしたの…?」
目を開けてぽかんとする舞に、俺は幸村を見てにやりとする。