<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第179章 冗談と本気 ― 幸村&姫 ―
「まつげを取ってやったんだ。目にくっついたままだと、中に入り込んで痛くなるからな」
俺が言うと、しまったという表情をする。
幸村、俺がだました事に気付いたな。
小さくちっと舌打ちした幸村は、訳のわかっていない舞の腕をつかむとどこぞへ連れて行こうとする。
「え…?幸村…?何…?」
「幸、おんなのこに乱暴するんじゃないよ」
俺がわざと呑気に話し掛けると、幸村はぎろりと俺を直球でにらみつけてくる。
「舞を口説くのは禁止です、御館様」
お、『御館様』と本気の口調だな。
「幸、だったら、ちゃんと舞と話しをしなさい」
俺も少し本気で言うと、一瞬黙って「はい」と頷く。
素直なところは小さい時から変わらない。
舞を連れて行く背中を見ながら、俺もきびすを返し、部屋へ戻る。
何だかんだ言っても二人の間で解決して、仲直りするのはわかっている。
すぐに甘い時が二人に訪れ、それを想像して俺のからだもぞくりとうずく。
さて、俺も町へ出て、俺の相手になるおんなを探しに行くか。
そしてそのおんなには秘密で、幸と舞について密やかに祝杯をあげよう。
幸、天女とうまくやれよ。
<終>