<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第179章 冗談と本気 ― 幸村&姫 ―
恋は秘密。
天女の視線は誰を見ているかな。
うーん、俺を見ていないのは確かだな。
「舞、どうしたんだい?」
「信玄様、ひどいんです、幸村ったら」
舞が頬をふくらませて怒っているところを見ると、幸村と何かあったらしい。
「そうかそうか、じゃあ幸村から俺に乗り換えるかい?」
俺としては本気なのだが、舞には冗談にして聞こえていないらしい。
「いやだ…信玄様ったらまた冗談おっしゃって…幸村ったらすぐ私のこと、イノシシって言うんですよ。そんなに私、イノシシみたいに突っ込んでいるんでしょうか…?」
「こんな可愛いおんなのこにイノシシなんて言う幸村が悪いな、それは。だから幸村から俺にしておきなさい」
やっぱりもう一度口説いてみるが、この天女は手強い。
「もう…だから信玄様、冗談は止めてください。信玄様のようなおとなのおとこのかたが、私のような小娘を相手にするわけないのはわかってますから」
おやおや、すっかり冗談だと思われているか、仕方ない。
「幸村は全然おんな心がわかってないからなー俺が言っておいてやるから許してやってくれないか」
俺が仕方なく言うと、舞は首を左右に振る。