<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第177章 弓張月 ― 姫&謙信 ―
覗き込まれた二つの色違いの美しい瞳が真剣な色を見せ、私は鼓動が跳ねる。
「だって、謙信様は、いらっしゃらないですもの」
真剣な眼差しがすぐ目の前に近付き、私は顔に体温が集まるのを感じる。
「顔が赤いな」
謙信様は目の前でそう言うと、私のあごをすくい、口付けを軽く一度した。
「…謙信様…っ」
「おまえのその顔、俺しか見せてはならぬぞ」
「…どういう顔か私にはわかりません」
あごをすくわれたまま反論すると、謙信様からまた口付けされる。
謙信様の口にされたお酒の味が、私の口内に移りからだの体温が一気にあがる気がした。
謙信様の片手がいつの間にかおちょこを置いていて、私のからだを一撫でする。
どうしよう、そんな事されるとますますからだの熱があがってしまう。
私の顔を見て、謙信様は更に笑みを深くされる。
「からだが悲鳴をあげているようだな」
「…謙信様のせいです…」
上目遣いで謙信様に抗議をすると、謙信様は私のからだを更に撫でられる。
「俺はここでも良いのだが?」
意味に気付いて私は頭をぶんぶんと左右に振る。