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<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹

第177章 弓張月 ― 姫&謙信 ―


「外は駄目です。人目につきます」

それを聞いて謙信様は笑う。

「ほう、そうか。人目につくから外は嫌か。でも中なら良いのだな」

謙信様の瞳に絡めとられ、私は動けない。

「では後は中で、酒とおまえを愛でるとするか」

私は完全に全身が赤くなるのを感じる。

「そんな言い方されると恥ずかしいです」

「俺とおまえの今更であろう?部屋に戻るぞ」

謙信様はすらりと立ち上がり、私の手をひいて部屋へ戻ると、私の着物の袷を乱暴に開き、胸元に顔を埋める。

見えていた弓張月はゆたりと動き、私たちのところから見えなくなっていた。

銀糸のような弓張月と、私たちの口付けからどちらからともなく一筋の銀糸をひく。

謙信様のいつも以上の愛し方に、私のからだはたやすく蕩け、熱をあげて悦びの声をあげる。

「…謙信さま…」

からだを強張らせて弓なりになる姿は、先程の弓張月を思い出させ、私もあんな風に謙信様にされているのかな、と自分の姿を想像してますます恥ずかしくなる。

「もっとのけぞれ、今日は違うおまえを俺に見せるが良い」

謙信様の余裕のない声が、まるで弓につがえる矢のように私の全てを貫き、そして違う世界へ誘われる事となった。


<終>
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