<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第175章 恋をする ― 姫&秀吉 ―
秀吉さんにそんなに大切に思ってもらえる信長様がうらやましい…
そんな事、比べちゃいけないのはわかってる。
秀吉さんの生き様を変えたのが信長様なのだから、秀吉さんが信長様を尊敬して一番に思っているのは、教えてもらったからわかってる。
私がそんな事を考えている間に、秀吉さんはあっという間に数本の反物を選び、どれにしようか品定めをしていた。
『どれも信長様に似会いそうな色だなぁ』
側でぼんやり秀吉さんの品定めを見ていると、秀吉さんはこちらをくるりと振り向いた。
「舞、おまえが作ろうとしている製法に合うものはあるか?」
「…え…うん、えっとね…」
作ろうとしている着物のデザインに合うものが有るかって事だよね。
私は広げられた反物をひとつずつ見て、そのうちの一本を選ぶ。
「これが良いかもしれない」
黒を基調とした上品な意匠のものに、秀吉さんも頷く。
「確かにこれなら信長様はお似合いになるだろうな」
秀吉さんは店主さんに支払いをし、その選んだ反物を持ってくれる。
「まだ大丈夫なら茶でも飲んで行くか」
そうして私を甘味屋へ誘ってくれて、どうしてこんなに優しいのだろう。
「私は大丈夫だけれど、秀吉さん、お仕事たくさん有るんでしょう?遅くなったらその分大変じゃないの?」