第175章 恋をする　― 姫＆秀吉 ―

「俺も付き合うよ」

私が反物を買いに城外へ出掛けると言うと、秀吉さんはこう言ってくれた。

「大丈夫だよ、一人で行けるよ」

忙しいの知ってるから、一人で行こうと思ったけれど、秀吉さんは更に言ってくれる。

「だーめーだ。一人じゃ危ないし、反物は結構重いだろう？」

そこまで言ってくれるのにむげに断っちゃ悪いかな。

「じゃあお願いします。すぐ終わらせるようにするからね」

「良い、良い、ゆっくり見定めなさい」

ぽんぽん、といつものように頭を軽く撫でてくれる仕草に、私は心が暖かくなる。

大好きなの、この、秀吉さんが頭ぽんしてくれるのが。



そしていつもの呉服屋さんへ行き、反物を見せてもらう。

「今度は何を作るんだ？」

「うん、信長様に新しい着物を頼まれてその生地を探しに来たの」

問われて答えた瞬間、秀吉さんの目の色が変わる。

「なにっ、信長様のか？じゃあ俺も見立てる」

座っていたのが立ち上がり、信長様に似合いそうな反物を探し始める秀吉さんに、忠誠心の厚さに微笑ましさを感じると共に、何故かほんのちょっとうらやましさを感じる。