<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第17章 東大寺 ― 姫&安土城武将 ―
私がそれを言うと、政宗は支度をしながら教えてくれる。
「そう、それ。その宝物の一つが蘭奢待。信長様は、将軍と同等の地位に就かれた事を天下に知ろしめす為、蘭奢待を戴いて力を持っていらっしゃる事を世間に広められたんだ」
こう言っては何だけど、香木一つでそんな効果があるの?
私の怪訝な表情に、政宗は私の頬を突つきながら教えてくれる。
「ほーら、そんな顔するな。おまえ、たかだか香木一つで、と思っただろう?
ところが蘭奢待については、香木一つで絶大な効果があるんだ」
政宗は蘭奢待を戴く事が、いかに政治的に効果がある事を教えてくれた。
とても貴重な名香、蘭奢待。
もしかして、現代だと絶対聞けない香り、かな?
「ほら、こうやって香を聞く準備するんだ」
政宗は手際よく、香炉を作っていく。
「政宗、上手だね」
私が褒めると当たり前、という顔を政宗がする。
「俺は料理も得意だが、香道も得意なんだ」
「そうなんだ…多趣味なんだね」
「おまえにも教えてやるよ」
政宗は香炉を仕上げて、私の腰を抱いて引き寄せる。
「ちょ…政宗、ダメだよ」