<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第164章 聞き上手は誰? ― 義元&姫 ―
「どういう事でしょう、お嬢様」
「あっちの似たようなものを売っているところでは、南蛮物のこういうグラス、先日行った時おっしゃる値よりだいぶ下でしたよ」
舞が指差す方向に、そういえば確かに南蛮物の品物を取り扱う店があった事を思い出す。
「ああ、そういえば、あの辺にそういう店があったね…」
俺が顎をつまみながら目線をその方向へやりながら思い出して言うと、こっちの店の主人は慌てて言う。
「わかりました、ではお嬢様に免じて、この値でいかがでしょう」
だいぶ安い値を言ってきた主人に、それを買う事を伝える。
「…舞は市の事をよく知っているんだね…」
買ったものを片手に持ち、もう片手で舞の手を引きながら歩く。
「偶然なの。先日、たまたま頼まれたものを探していたら、南蛮物を売っているお店があって、そこで頼まれていたものも売っていたから買ったの。その時、綺麗なものがたくさんあったから、しばらく見せてもらって、お店の人といろいろお話しもして、ついでにどのくらいするかも聞いていたんだ」
「…ふぅん、すごいね、いろいろ聞き出せるなんて…それじゃあ」
俺はふと立ち止まって、つないでいる手を離し、舞の顎をすくいじっと見つめる。
「義元…さん?」
俺がじっと見つめていると、いたたまれないように舞が恥ずかしそうに目をきょろきょろと落ち着かなく動かし、顔を赤くさせていた。
「いろいろ聞くより前に、舞は顔が全てを物語っているんだな」