<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第164章 聞き上手は誰? ― 義元&姫 ―
「え…いったい、どういう…」
焦るように言う舞に、俺は笑みを浮かべ続けて言う。
「そんなんじゃ、密偵にはなれないな、舞は」
「なりませんよ、私にはそういうのは出来ませんもの」
俺の冗談に真面目にかえす舞に、俺は思わず破顔する。
「舞は本当に面白い。飽きないし、それに…」
「…それに…?」
目をぱちくりさせる舞に、俺はさりげなく口付けをする。
「義元さん…っ」
驚く舞に、俺は笑みを深くし囁く。
「顔に全て書いてあるね、俺と一緒に居たいって。今日は離さないけれど、良いかな?俺が舞の事をいろいろ聞き出してみようと思っているけれど」
「え…え…私の事…?」
「店の主人からいろいろ聞き出せるなら、俺は反対に舞からいろいろ聞き出してみたいんだ。いいでしょ?」
舞は慌てるものの、俺の笑みを見つめ囁きに頬を染め、小さくこくりと頷いた。
決まりだ、俺が一晩かけて、舞の事をいろいろ教えてもらおうと思う。
もう一度舞の手を引いて、二人きりになる為に歩いていく。
ゆっくり昇ってきた月が俺達を包むように光を投げかけ、闇だけの部屋を薄明りに灯して舞の白い肌を照らしていた。
<終>