<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第164章 聞き上手は誰? ― 義元&姫 ―
舞の姿は遠くからでもすぐわかる。
長い髪をゆらゆらと揺らし、娘らしい色の小袖がよく似合う。
大きな瞳はくるくるとよく動き、俺にはどこが面白いのかと思うような事でも、くすくすとよく笑う。
そうだ、舞は笑顔が似合うから、俺はいつでも笑顔を見ていたいし、彼女を笑顔にしていたい。
「義元さん、次は何を見ましょう?」
二人で市を歩き、俺の好みのものを見るのに、付き合ってくれる舞。
南蛮物で周囲のものを映り込ませて光るグラスなぞ、この国にはない製法で作られているのだろうな。
美しいものに目のない俺は、早速店の主人を呼び寄せる。
「はい、なんでしょう、旦那さま」
「これ、どのくらいするの?」
店の主人が告げる値は、俺が思っているより下だった。
「ふーん、思ったより安いね、じゃ、これ…」
もらおう、と言おうとした瞬間、隣に立っていた舞が待ったと言わんばかりに口を出してきた。
「それ、かなり高いですよね?他のお店の似たようなお品は、もっと安かったですよ?」
ほくほく顔の主人の顔が瞬間変化するが、すぐ穏やかさを取り戻して舞に話す。