<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第161章 裏参謀の愛 ― 姫&光秀 ―
「どうですか?」
無言で口に入れる光秀さんに、恐る恐る聞いてみるが、その答えにがっくりする。
「俺にはうまいのかうまくないのかわからない。俺にはメシはあくまで腹を満たすだけのものでしかない」
そうだった、光秀さんは味おんちで、だから出された膳のものを全て混ぜて一つにして、そのまま掻き込む天下飯の発案者なんだっけ。
「そうなんですね…」
がっくりした口調に光秀さんは気付いたようで、私が食べていたおにぎりを横からぱくりと一口食べた。
「…みつ…っ!」
人が食べていたおにぎりを横から食べるなんて、驚きの行動に私は思わず固まると、光秀さんは咀嚼し終え、にやりと笑みを浮かべる。
「ほう…おまえの食べているものは塩気があって美味いな」
「え…だって、今さっきのおにぎりは味がわからないって…」
同じおにぎりだもの、味に違いは無いはずだよ?
私はきょとんとして光秀さんの顔を隣から見つめると、光秀さんは破顔して私を覗き込む。
「全くおまえの頭は何が入っているのだか。おまえが口にしたものは俺にとって、美味く感じるということではないか」
「は?え?そうなのですか?」
思わず問い直してしまった私に、光秀さんは笑いながら私の頬をつついて言う。
「おまえは本当に愛らしいな。あまりにたわいない事で動揺しすぎる」