<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第15章 瞬間 ― 秀吉&姫 ―
素直に返事をする舞が可愛いな、と思い、一冊ずつ題名を読み上げていく。
その都度、分類がどこか確認し、本を丁寧にしまっていく。
そのうち、分類場所が一番上のところにしまう本が有り、舞が背伸びし、手を伸ばしてしまおうとしていたのに気が付く。
「ああ、悪かった」
舞のすぐ後ろに立ち、しまおうとしていた本を取り、一番上の棚にその本を置く。
ただ、それだけなのに、舞はやけに顔を赤くして、こちらを見上げている。
「どうした?」
俺が聞くと、はっとしたように表情を変える。
「なんでも、ないです。どうもありがとうございます」
結局、最後まで二人で本を片付ける。
「手伝ってくださって、ありがとうございました」
舞は恐縮したように言う。
「いや、気にするな。今日は特に急ぎの用もなかったしな」
書庫を出、二人で城の廊下を歩き、舞の部屋の前まで送る。
「…本の字が読めない、とさっき言ってたよな?」
「はい、うねうねしたくずし字は読みつけないので…」
俺は廊下を歩きながら、考えていた事を言う。
「毎日は難しいかもしれないが、くずし字を教えようか」