<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第124章 寂しさの後に ― 信玄&姫 ―
「見ているだけ…何も出来ないって辛い事ですよね…」
「そうだな、でも必ずしも悪くなっているとは限らないから、そこに住む民が当たり前の生活が出来ている事を期待するよ」
「あの、気を付けて行ってらしてください」
おずおずと言う舞の言葉に、俺は余裕たっぷりに答える。
「どうせなら気を付けて、と口付けしてくれると嬉しいんだけどな」
「そっ、それは…しませんよ!」
赤くなって言う舞を見て、俺は破顔し、その顔を忘れないと思いながら、舞の部屋を後にした。
数日後、無事元領地の視察を終え、春日山に戻ってきた俺を、真っ先に出迎えたのは舞だった。
「おかえりなさい、信玄様」
「ああ、ただいま、姫」
俺は馬から降り、舞と至近距離になり、言う。
「ここでおかえりの口付けがあると嬉しいんだけどな」
「そっ、それはしませんよ…」
前と同じ答えが戻ってくるが、以前程抵抗が無いのは良い傾向だ。
「信玄様、馬を戻しておきます」
一緒に行った幸村が俺の馬をひいて、馬番へ手綱を渡すのを見て、俺は舞を促して城の中の自室へ行く。