<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第124章 寂しさの後に ― 信玄&姫 ―
全く天女には適わないな。
俺はため息とも違う、しようがないな、という笑みをこぼした。
安土からさらってきた舞とは、賭けをしながら俺は少しずつ堕としていった。
月を見る時も舞を尊重して、離れて見た。
「ここからはみ出たら駄目です!」
「ああ、わかったよ、姫」
俺は余裕の笑みを浮かべて舞の言う通りにした。
少しずつ、少しずつ、俺をわからせて、姫のかたくなな心を溶かしていく。
「信玄様がしばらく不在に?」
ある日、俺は、しばらく春日山を離れる事を舞に伝える。
「どちらに行かれるのですか?信玄様」
「以前の俺の領地だったところを見に行ってくるのさ。今、どうなっているか調べてくる」
「…あの、以前という事は今は違う人の領地なんですね?その領地が、その…信玄様が統治していた頃より悪くなっていたら、どうするんですか?」
ほう、なかなか鋭い事を聞いてくるな、と思いながら俺は舞の質問に答えた。
「今の俺には何も出来ないから、良くても悪くても見ているだけしか出来ないのさ」