<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第119章 次は姫をひとりじめ ― 義元&姫 ―
部屋へ舞を招き入れ、襖を音も無く閉める。
俺の部屋に飾られた南蛮の器を見付けて、「うわぁ、綺麗」と声を上げる舞は可愛い。
「義元さん、これ、綺麗ですね」
「南蛮のがらすというもので出来ている器だよ。綺麗だろう?」
「ええ、見る角度で器の色が違って見えるんですね」
「よく気が付いたね」
俺は舞が、俺と同じ、綺麗なものを綺麗と言う心を持っている事に満足している。
俺は茶器をひとつ棚から取り上げ、目の前に置いてあぐらをかき、その間に舞を座らせる。
俺は舞を抱くように両腕に包みこみながら、目の前に置いた茶器を取り上げる。
「ほら、見てご覧。この茶器、この釉(うわぐすり)の掛け方がすごく良いんだ」
「綺麗な色ですね。私には難しい事はわからなくて、綺麗だなってくらいしか思う事はないのですけれど」
それで良いんだ、難しい事はわからなくても、綺麗なものを綺麗、と思うだけで。
俺がその茶器の良さを説明すると、頷きながらきちんと俺の話しを聞いてくれる舞が愛しくてならない。
俺は茶器をその場に置くと、腕の中の舞を抱えて立ち上がり、褥へ移動しそこへ舞を横たえる。
「義元さん…」
舞の期待に満ちた、潤んだ眼差しが見上げて、俺を見つめる。