<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第118章 おんなどうし ― 姫&寿桂尼 ―
「お召し物が濡れるから嫌がられるかと思いましたが、喜んでくださって良かったです」
「ほほ…舞殿がしてくださる事は嬉しい事のほうが多いのですよ。
ねぇ、舞殿、私にだけ教えてくださるかしら?貴女はどちらからいらしたの?普通のお育ちのかたではないでしょう?」
私は寿桂尼様の質問に驚き、寿桂尼様の顔をじっと見つめる。
「あらあら、驚いていらっしゃる。私は貴族の出で、武家に嫁ぎました。
つまり貴族と武家の者と、両方の育ちの者を見る機会が有ったのです。
でも舞殿、貴女を見ていると貴女はそのどちらの育ちとも違うと感じます。
かと言って商家やそれ以外の出とも思えませぬ。
義元殿が気に入っていらっしゃる不思議な貴女…そろそろ私にだけ話してくれませぬか?」
寿桂尼様の穏やかで、でも好奇心溢れる瞳を見つめていたら、このかたには適わないな、という気持ちになり、話しても良いと思うようになった。
義元さんにもまだ言っていない、私の秘密を伝えようと、私は姿勢を直した。
「寿桂尼様にお話しします。私はこの時代の生まれではありません」
「この時代、とは…?」
「この乱世、戦国時代です。私は更に先、500年程後の時代から来た者です」
「…500年後の時代から…?」
寿桂尼様はさすがに横になったまま目をしばたたかせている。
そしてほほ、と笑われた。
「そうですか、遠い先の世からいらしたのですね、舞殿は。それなら貴女の言動が、私の知る今迄の状況と当てはまらないのが良くわかりましたね」
「…疑われないのですか?」