<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第1章 ずっトモ ― 佐助&幸村 ―
彼は目を三角にして信玄様に注意する。
しかし、上司に説教する部下を俺は初めて、見た。
「えーと、きみは?」
「あ、俺、真田幸村。幸村で良い」
驚いた。このおとこが、あの、徳川家康が生涯勝てなかった唯一の武将、真田幸村か!
「えーと、おまえは?」
自分だけ自己紹介させて、と言った表情で幸村が俺を見る。
「俺は猿飛佐助。謙信様の部下で、軒猿の一員でもある」
「ああ、だからそんな装束なんだな、佐助は」
横から部下たちの自己紹介を聞いていた信玄様が、眼を細めて笑みを浮かべる。
「よし、佐助。自己紹介も済んだし、今日はお祝いだから甘いもの、頼むな」
「だーかーらー、だめだって言ったでしょう!」
あくまで甘いものをねだる信玄様と、何度も注意する幸村に、珍しく俺はふ、と笑みを浮かべた。
「…ほう、珍しくおまえも笑うのだな」
様子を見ていた謙信様が杯(さかずき)を持ったまま、俺を見る。
「信玄様と幸村は良い上司と部下だと思ったんです」
俺と謙信様も良い上司と部下だと思うが、こちらの二人も良いと謙信様に言う。