<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第1章 ずっトモ ― 佐助&幸村 ―
俺が近くへ移動し手をつかえると、にこにこして信玄様は頼んでくる。
「悪いが、俺に甘味をたくさん用意してくれ」
「…甘味…甘いもの、ですか?」
表情筋は死んでると言われるものの、驚いた声は出る。
「そう、甘いもの。俺の大好物なんだ」
信玄様の大好物は甘いもの、なのか。
「かしこまりました」
甘味を用意してこようと立ち上がるが、すぐ止められた。
「だーめーだー」
先程、信玄様のすぐ後ろにかしこまっていた彼が、酒で酔った少し赤い顔をして俺を掴んだ。
「信玄様には、甘いものを出さなくて良いんだ」
「しかし、信玄様のご要望であれば…」
信玄様と、その彼の真逆な依頼に瞬間戸惑う。
「信玄様、甘いものはさんざん、ここに来る途中の茶屋で食べたでしょう。
だから今日はもうだめです!」
「そんな事言うなよー、冷たいなー、幸村は」
拗ねたように信玄様は幸村、と呼んだ彼に甘える。
おとなの男が甘える姿というのは、やたら色っぽすぎるな。
「冷たいだろうが、何だろうが、あんたは甘いものを摂りすぎなんですよ」