<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第106章 気付かぬ片想い ― 三成&姫 ―
「はい…舞様が濡れてはいけませんので…」
光秀様は私の様子に、先程の口付けを私が見ていたのを明らかに気付かれたようでした。
「舞、秀吉の御殿まで、後は三成に入れていってもらえ。俺はまだ所用がある」
「光秀さん…」
舞様が光秀様の顔を仰ぎ見ましたが、その横顔は寂しそうに見えました。
光秀様は私と傘をくっつけると、舞様を片手で私のほうへ押し出し、舞様は少々不満げな表情を浮かべ、光秀様を見ながらこちらに移動されました。
私は、舞様は光秀様をお好きですが、光秀様はそこまで舞様をお好きではないのかとこの様子から思えてきました。
光秀様は無言で舞様と私を一瞥し、去って行かれ、私も舞様を御殿への道へ促しました。
「さ、いつまでもここにいらしては濡れてしまいます。早く御殿へ参りましょう」
「…三成くん、さっきの、見ていたのでしょう?」
舞様は赤くなってこちらを睨んでいらっしゃり、私は頷きました。
「傘の中で、光秀様と口付けなさっていた事ですか?」
「…もう!そんな事、はっきり言わないでよ!」
「しかし、お二人は恋仲であれば、口付けされてもおかしくないでしょう?」
私の弁に、舞様は苦い顔をして横を向かれました。
「違うよ、私が光秀さんを好きなだけ。光秀さんは私の事が好きなのかどうか、わからない」