<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第91章 宴 ― 姫&信長 ―
「はい、そうですね」
私はふふ、と微笑みながら、信長様にお酌をし、信長様はその注がれたお酒を口にされる。
そのお酒の飲み方も、普通は酔う程汚らしくなってくるものの、信長様はどれだけ飲んでも所作が美しく、崩れる事が無い。
それに気が付いてから、信長様の姿勢の良さや身だしなみがいつもきちんとしているところに改めて気付き、戦国武将ともなると、いつ誰から見られているかわからないから、常日頃、動作に気を付けているのかな、と思うようになったの。
「…なんだ?貴様も飲むか?俺が酌をしてやろう」
私がじっと信長様を見つめていたのに気が付くと、信長様は私が飲みたいのかと思われたのか、杯を私に渡してくださり、更にお酌までしてくれた。
「ありがとうございます」
こくり、と白濁した強い酒をゆっくりと含む。
ねっとりとした味わいは、私には苦手な味だったけれど、だんだんと慣れて飲めるようになってきたんだ。
それだけ私も、戦国ライフを楽しむようになってきたってところかな。
「ごちそうさまです、では私が」
杯を戻し、私が信長様へお酒を注ぐ。
「信長様のお酒の飲みかたは、全く崩れなくて綺麗ですね」
思っていた事を口に出して言うと、信長様は一瞬呆気に取られたような表情をし、それからふ、と笑みを浮かべた。
「そうか、俺の飲みかたは崩れないか」