<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第87章 貴女は蝶、私は花 ― 三成&姫 ―
「そう?それならいいけれど…もしかして忙しいのに、私をここへ連れて来てくれたの?」
舞様は私の顔を覗き込んで聞いてこられる。
あまりに近い距離に、私の心の臓が大きく跳ねそうです。
「いえ、舞様に喜んでいただけたらと思いまして」
「そうなの?本当にありがとう」
心から嬉しそうな舞様の笑顔に、私の心は弾けました。
「舞様」
私は思わず舞様の着物の袖を掴み、舞様をこちらに引き寄せます。
「三成、くん…?」
「しばらく、このままで…」
舞様をその場で抱き締め、甘く香る舞様の首筋に顔を埋めました。
無言の二人の間を、虹のような煌めく風が通り過ぎます。
舞様を離したくない、誰にも渡したくない、そんな思いが溢れるのに気付きました。
「…舞様…貴女を離したくないです…誰にも…渡したくもない、です…」
私の告白に、舞様が息を呑む様子がわかり、少し間を置いて舞様が言います。
「離さないで…誰にも渡さないで…三成くん…」
思わず私は顔を上げて、舞様の顔を見つめました。
舞様は少しうつむいていらして、だけれど顔は真っ赤に染まっていました。