<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第85章 ふたたび ― 姫&義元 ―
「これ、良いんじゃない?」
舞は義元の審美眼に驚く。
確かに自分だったらこの反物は選ばなかった。
義元に頼んだ人の人となりを説明しただけで、その人に合うものを選んでしまった。
「義元さん、すごいですね。ありがとうございました」
舞は反物を選んでもらって、感嘆の声をあげる。
「ん?ああ、俺は綺麗なものが好きだからね」
舞は義元に言う。
「反物を選んでくださった御礼をしたいのですけれど、お団子食べに行きませんか?」
義元はふ、と少し唇を動かしただけの笑みを浮かべ、いいよ、と返事をした。
二人は茶屋に入り、団子と茶を頼んだ。
「舞、きみ、この後予定何かあるの?」
義元からの問いに舞は首を傾げる。
「いえ、特に急ぎの用はありませんけれど」
「じゃ、母上がきみに会いたがってるんだ。この後また来てくれないかな」
「寿桂尼様がですか?私で良ければ喜んで」
舞は寿桂尼にまた会えるとは思えなかったので、義元からの誘いに驚き、でも嬉しそうに答えた。