<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第84章 嘘が真になる日 ― 姫&光秀 ―
すると光秀さんは思い出した、と言った。
「そう言えばその声の者に、卯月の朔日と言え、と言われたな」
「卯月の朔日…四月一日…あ!エイプリルフール!!」
ようやく気が付いて、私がすっとんきょうな声をあげると、光秀さんは訝し気な表情で私を見た。
「えい…?なんだ、それは?」
「うう、今日は嘘をついて良い日なんです…」
湯の中でからだを必死に隠しながら、去る気配のない光秀さんに私は言った。
「嘘をついて良い日…おまえの国ではそんな変な風習があるのか?」
「…そ、そうなんです!変わった風習でしょう!
だから光秀さんはその天井の人に嘘をつかれたんです!」
「そうか?その声の主は、俺が断ったら、他のおとこに声を掛けると言っていたぞ?」
『ああ、佐助くん、もしかしたら、私のこの恋心を知っているんだね…』
私はいっその事、と、思い切って湯の中から光秀さんに告白をした。
「わかりました、本当の事を言います。私は光秀さんの事が、好きです」
「ほう、俺の事が」
光秀さんは意外と言った表情で私を見つめた。
「これは嘘じゃありません。天井の人はわたしと同じ国の出身の人で、私が光秀さんを好きなのを知って、今日の嘘をつける日にわざと私に本当の事を言わせようとして、いたずらをしたんです」