<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第84章 嘘が真になる日 ― 姫&光秀 ―
訪問した佐助くんにお茶を出して、珍しくすぐ手を出さないな、とは思ったんだ。
冷めた頃にお椀に手を伸ばしたから、冷たいものが欲しかったのかな、と思っていたら、佐助くんの手が滑って、私にぱしゃんとお茶が全部かかったの。
佐助くんはしきりに謝ってくれたけれど、何だか濡れた着物も気持ち悪い。
それを気にしてくれた佐助くんは去ってくれて、私は湯浴みの為に湯殿へ行った。
温かいお湯が気持ち良くて、一人でのんびり入っていたら、しばらくして外から声が掛けられた。
「舞、俺に背中を流して欲しい、と誰ぞに頼んだらしいな」
『え!?この声は…』
低い艶めいたこの声は…内心本当に驚いたよ。
「み、光秀、さん!?」
私が声を掛けると、光秀さんがカラリと湯殿の戸を開けた。
「だ、だ、誰が、そんな事、を…!」
私は驚きながら湯深くにからだを沈め、光秀さんに聞いた。
「それはおまえが頼んだのだろう?天井から誰ぞの声がしたぞ」
「天井…!」
『佐助くん!?佐助くんがどうして、光秀さんをここに…!?』
理由がわからなくて私は湯の中でパニックを起こし掛けていた。