<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第83章 えいぷりるふーる ― 佐助&姫 ―
俺は申し訳ないと謝り、天井裏へ消えていった。
さ、ここからいたずらの始まりだ。
と言ってもいたずらでは無いんだよな。
舞さんが恋をしていて、間近にせまったワームホールに飛び込むつもりがないのは気付いているから、俺がその恋成就の手伝いをしようって算段なんだ。
余計な事をしてって怒られるかもしれないけれど、そもそもこの時代に連れてくる予定もなく連れてきてしまったから、この時代に慣れていく舞さんを守ってくれ愛してくれる人がいるって事は、俺にとっても気がラクになる部分も大きいんだ。
さ、舞さんが湯浴みに出掛けたな。
悪いけれど一応湯浴みに行ったかどうかの確認はさせてもらうよ。
俺は天井裏を慣れた足つきでひょいひょいと動き、湯殿へ移動し、舞さんが来たのを確認し、そしてある部屋へ向かってまた移動した。
こつん
天井裏からその部屋を叩くと、その人は上を向いて何用だ、と常のごとく冷静に声をあげた。
「突然失礼します」
さすがだな、と思いつつ俺は天井裏から声を掛け、姿はさすがに見せなかった。
「舞さんが湯浴み中ですが、是非貴方様に背中を流していただきたいとご所望です」
「…俺に?何故背中を?女中に頼めば良い事だし、おまえ誰だ?」
「俺の名前はご容赦を。それより舞さんの背中を流すのはお断わりという事で良いですか?それでは他の武将様にお願いしましょうか」
わざとそう言ったところ、その武将は立ち上がり、天井を見上げたまま言った。