<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第78章 罠 ― 信玄&姫 ―
更にむくれる舞は本当に可愛いが、そろそろ本題に入るか。
俺は舞の手を握ったまま、反対側の手で舞の腰を抱き、斜め上から見下ろすように、見つめながら言った。
「残念だが舞は俺達の切り札でな、早々安土へ返す訳にはいかないんだ。
しばらくここがきみの部屋で、俺がちょくちょく構ってあげるから、早く俺に惚れなさい」
「…な、どうして…」
俺の言に言葉を失う舞。
俺は両手を離し、舞から離れて部屋を出て行った。
「…いったい、どういう事…!?」
大声で叫ぶ舞の声に、俺は笑みをこぼさずにはいられなかった。
俺はこうして、ちょくちょく舞の部屋に甘味を持って訪れ、先日は一緒に月を見た。
舞が近寄るなというので、俺は取り決めた畳より奥へは近寄らない。
そこで俺達は離れて月を見た。
月光を浴びる舞は美しく、俺は見惚れてしまったのだが、後で聞いたら舞も俺の月の光を受ける俺の横顔に見惚れたらしい。
本当に舞は愛らしくて、俺の仕掛ける罠にはまっていく様子が見てとれる。
俺は微妙な距離を保って舞に接し、時には別なおんなの許へ行くそぶりを見せて、舞を無視したり、そんな時の舞の顔は自分以外におんながいるのか、といった、驚きの表情を見せていた。