<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第78章 罠 ― 信玄&姫 ―
舞、約束はしないぞ。
だけど、賭けはしよう。
俺が必ず勝つ賭けだが、な。
「そんな賭けあるんですか?信じられない!」
舞は少しむくれて俺の顔を見る。
「ああ、俺に舞が俺に惚れるという賭けだ。俺が必ず勝つ賭けだろう?」
「な、なんですか、それ。どうして必ずなんて言えるんですか?」
呆れた舞が焦りつつ言う。
「何故?どうして?俺は舞が俺に惚れるという自信があるからだが?」
俺は色気を含ませた笑みを浮かべ、じっと舞を見つめた。
舞はぎょっとした表情を浮かべ、じりじりと俺から離れようとするが、あいにく俺がしっかり舞の手を握っているから離れようがない。
「私は惚れません!それより安土城へ返してください!」
そう、俺は天女を安土から春日山へさらってきたのだ。
柔らかい微笑みを浮かべ、見ず知らずの俺に親切に道案内をしてくれた舞を、織田信長寵愛の姫と知りつつ声を掛け、その道すがら連れ去るのは簡単だった。
「それは難しいな。舞は俺に惚れて、安土へ帰りたくなくなるはずだからなぁ」
「だから、惚れませんって!勝手に決めつけないでください!」