<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第78章 罠 ― 信玄&姫 ―
もうすぐ俺の罠に堕ちる。
俺は確信を持って舞への接しかたを、相変わらず適度な距離を持ったままでいた。
構ったり、構わなかったり、時折、別なおんなの存在を匂わせたり。
そして得意な大工仕事で作ったものを舞に贈り、天女の笑顔を見せてもらう。
微妙な距離だった月見の位置が、気が付いたらぴったりとくっついていたのは、いつからだったか。
舞が俺に寄りかかるようにくっつき、俺はそんな舞の肩を抱いて月を見る。
「信玄様…負けました…」
俺がその言葉に舞を見ると、舞は俺を見上げて既に潤んだ瞳を見つめていた。
「言っただろう?俺に惚れるって」
俺は笑みを浮かべ、舞のからだを引き寄せ、俺の膝の上に座らせた。
「…そうですね、そうなりました…」
ちょっとふくれた舞の顔は愛らしくて、今すぐ食べてしまいたくなる。
俺は舞の唇に、自分の唇をついばむように何度も何度も押し当てると、舞の両腕が俺の首に回ってきて抱き締めてきた。
俺は口付けを深いものにすると、舞の表情がとろりとし、俺に全てを預けるような体勢になった。
俺の罠にかかった可愛い獲物を、隅々まで味わい尽くそうか。
そっと舞のからだを横たえると、舞の瞳は俺を映して可憐に揺らめいた。
<終>