<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第76章 甘い誕生日 ― 秀吉&姫 ―
「いいや駄目だ。舞のほぐしかたでは、綺麗に小骨が取り切れないからな」
俺は強引に焼き物の皿を取り上げ、小骨をひょいひょいと取り除く。
舞は俺の手つきを感心しながら覗き、自分の右手に握られた箸の持ち方を直していた。
そう、舞の箸の持ち方が変わっているのに、俺が最初に気が付いた。
注意して直させようとし、舞も努力しているが、なかなか癖は直せない。
ま、練習するしかないだろう。
俺は、骨を除いた魚を一切れ、舞の口元へ、あーんと運ぶ。
「え?良いよ、自分で食べられるから」
赤くなってもじもじする舞が可愛くてならない。
「そんな事言わずに、これくらいさせなさい」
口をつぐんでいた舞だが、ようやく俺の運んだ魚を口にした。
「美味しい」
にこりとする舞に俺も嬉しくなり、ようやく魚の皿を舞に戻す。
夕餉が終わり、二人で茶を飲みながら、部屋を再度見回す。
「本当に綺麗に直せたね。信長様、すごいね、障子貼るのも畳敷くのもあっという間だった」
「あのかたはいろいろな才能の持ち主だからな。なんでも素早く器用にこなすんだ」
信長様の事になると一晩中語れる俺だが、今はそれをする時では無いくらいわかる。
くすくす笑いながら舞は続けてしゃべる。