<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第75章 旅立つ ― 姫&安土城武将 ―
初めて会った時、そういうつもりでなかったのかもしれないけれど、私を結果として助けてくれた謙信様。
気が付くと私はもっと謙信様と話したい、もっと謙信様を知りたい、という不思議な感情に囚われていたの。
それがどういう感情なのか、気が付くのに、時はあまりかからなかったわ。
「貴様はどこにいようが、俺に幸運をもたらすおんなである事には間違いない」
信長様が言葉を発すると、佐助くんも神経を張りつめるのがわかる。
「春日山へ行かせるのは本望ではないが、貴様の望みであれば俺は貴様を行かせよう。だが、俺が貴様の幸運を欲する時は遣いを出す。その時は必ず俺の許に馳せ参じよ」
「はい、信長様。謙信様との戦でなければ、という条件が付きますが」
私は重要な一言を付け加えて返事をする。
すると信長様は片頬だけで笑った。
「ほう、先手を打ってきたか。謙信との戦の際に貴様を呼ぶつもりでおったのだがな」
「それは困りますよ、信長様。私は戦は本当はして欲しくないんですから…!」
私の言葉に信長様は愉快そうに更に笑って言った。
「貴様が戦の無い、遠い未来から来たからこそ、戦を嫌うのはわかっておる。しかし、俺は天下布武の為、戦をどうしてもせねばならぬ時がある。それを理解しろ」
「そ、それはわかってます…でも戦は無いほうが、みんなの為に良いじゃないですか…」
「無いほうが良いのは誰もがわかっておる。しかしこの乱世において、戦をせねば片付かない事柄もあるのだ」