<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第75章 旅立つ ― 姫&安土城武将 ―
そして信長様は佐助くんの顔を見る。
「佐助、もう良いから、このわからず屋をさっさと越後へ連れて行くが良い。謙信には貢物をやるから、この俺に早く服従するよう伝えておけ」
「さっさと連れて行くのは賛同しますが、その次のお言葉は聞かなかった事にしておきます」
しれっと佐助くんは答え、信長様はその言葉に声を出して笑った。
「さすが謙信の腹心だな。面白い回答をしてきおった。佐助、貴様に舞を託す。無事に連れていけよ」
「かしこまりました」
短く返事を佐助くんはし、私達はいよいよ安土を離れて出立した。
「いってしまいましたね…」
三成が残念そうに、見えなくなった舞の姿を追い掛ける。
「三成、にんじん料理でおまえをなぐさめてやるから安心しろ」
三成の肩を抱いて政宗が言うと、三成は珍しくあからさまに嫌な顔をした。
「それは料理ではありません。私は遠慮させていただきます」
「好き嫌いはいけないぞ、三成」
「舞様が、いつぞや作ってくださったにんじん料理は食せたのですが…」
「舞はもういないからな、俺の料理で我慢しろ」
政宗が重ねて言うと、家康も突っ込んだ。
「茄子だと思ってにんじん食べれば良いんじゃないの?」
「家康様はさすがに素晴らしい事をおっしゃいますね。でも茄子だと思ってもにんじんは食べたくありません」
「城へ戻る」
会話を斬るように信長が発言し、全員が、去った舞の姿を回想し、城内へ戻った。
全員の心情は同じく『舞、幸せに』であった。
<終>