<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第7章 だいすき ― 姫&家康 ―
「こんなところじゃないよ。連れてきてくれてありがとう」
私の笑顔を見て、貴方は少し赤くなって、またそっぽを向く。
あれ?
晴れているのに、ぱらりと雨。
「きつねの嫁入りだ!」
二人であまり大きくない木の下に駆け込んで、雨を逃れる。
「濡れなかった?」
貴方は袂(たもと)から手拭いを出し、たいして濡れてないのに、私を拭いてくれる。
天邪鬼、と貴方の事を他のかたは言うけれど。
私は、貴方が大好き。
「家康」
私は大好きな貴方の名を呼ぶ。
顔をあげて私のほうを向く貴方の頬に。
私はそっと口付ける。
「だいすき」
そう伝えると、貴方は真っ赤に染まって、そっぽを向いた。
貴方の様子をくすりと見て、ふと気付く、雨は止んだみたい。
「行こうか」