<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第68章 聞こえる旋律 ― 光秀&姫 ―
「歌って良いですか?じゃあ、違うのを歌いますね」
嬉しそうに舞は言うと、先程とは違う歌を歌い出した。
柔らかい声が不思議な節を伴い、先程とは違う、また聞いた事のない旋律を紡ぎ出す。
言葉がよく聞き取れないので、どういう歌か全くわからないが、未来ではこういう歌を聞く事が出来るのか。
舞が歌うものなら、良いものに聞こえるから不思議だ。
俺はつい舞の歌声に聞き入る。
舞は穏やかに、歌うのが気持ちよさそうな表情をし、俺はその表情につい見惚れた。
-ほう、この小娘はこんな良い顔をするのか。
歌い終わると、舞は俺を見て微笑んだのだが、その笑顔は何故か眩しく見えた。
俺は何故か覚えのない胸騒ぎの予感に囚われ、これ以上小娘といると危険と判断し立ち上がる。
「また、聞かせてもらおうか」
「…はい、いつでも」
舞は一瞬戸惑った表情をしたものの、微笑みながら俺と言葉を交わす。
「この歌とやらは、信長様達の前でも披露するのか?」
「え?歌をですか?しませんよ?だって不思議がられるでしょう?」
「それはそうだが。信長様なら聞いて面白がられると思うが、歌ってみてはどうだ」
「嫌ですよ、恥ずかしい。ここでひっそり歌うから良いんです」