<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第68章 聞こえる旋律 ― 光秀&姫 ―
信長様達の前でも歌いたいのかと思ったら、相反して違う返事がきた。
「それなら俺も聞きにきてはいけなかったか」
恥ずかしくて一人でひっそり歌いたかったなら、俺が来たのも迷惑だったか、と問う。
「あ…いえ。光秀さんなら良い、かな」
照れ笑いをして舞は言うので、俺は何故かと更に問い掛ける。
「…どうしてそんな事まで聞きたいんですか?」
少し赤くなって、立ち上がっている俺を見上げる舞の瞳は、熱をはらんでいるように見えるのは俺の気のせいだろうか?
「どうした?その顔は」
「…どんな顔してるんですか、私?」
「俺から離れたくないという顔に見えるが」
わざと俺が言った言葉に、俺を見たまま真っ赤に染まる舞の顔を見て、俺は図星だったのか、と内心驚く。
俺はまた舞の隣に座り、舞の頬に指をするりと滑らせると、舞の瞳が俺を熱望するような思い詰めたものに染まる。
俺は頬を滑らせた指で舞の顎をそのまますくいあげ、舞の瞳に俺を映し込む。
もっと、近づいて、良いのだろうか。
俺は少しずつ顔を近づけていくと、舞はそっと瞳を閉じ、そのまぶたがごくごく震えているのに気付く。
嫌なら瞳は閉じないし、俺の手をはねのけているだろうから、嫌ではないだろう。
俺は、拒否されないのを良い事に、そのまま、顔を近づけていった。
<終>