<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第68章 聞こえる旋律 ― 光秀&姫 ―
聞いた事の無い旋律が聞こえる。
声の持ち主を探して、その声の方向へ俺は足を運ぶ。
しばらくして、城の庭の木の下に座って、聞いた事の無い旋律を口にする舞を見付けた。
舞の言葉が終わるのを待って、俺は話し掛けた。
「…舞、今のは何だ?」
「あ、光秀さん…今の聞いてたんですか?」
「聞いてた、というより、聞こえてきたから、聞きに来たのだが」
「ああ、聞こえちゃったんですね、そのつもりなかったんですが。つい、声が大きくなっちゃいましたか」
ふふ、と笑みを浮かべる舞の隣へ足を進め、その場に俺も座り込む。
「私のいた時代の、歌を歌ってました」
舞は俺が隣に座った事に驚いたようだったが、すぐ表情を改め、何をしていたか俺に教えた。
「ほう、おまえのいた時代の歌とやらは、俺達の知るものは全く違うのだな」
この時代の唄と言ったらいわゆる能楽だ。
「他に歌えるものがあったら聞いてやろう」
俺は、本当は俺自身が聞きたいのだが、敢えて聞いてやろう、という言い方で舞の顔を見る。