<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第6章 分かれ道 ― 姫&顕如 ―
舞の言葉に、顕如は目を見開くが、かえした言葉は正反対だった。
「私がここから出る時は、処刑、つまり死ぬ時だ。生きて同胞に会えるとは思うておらぬ」
闇色がそれでも穏やかで静かに舞を見る。
「どうしてそんな生き方を選んだんですか?」
「…どうして、か…私の出来る中で同胞を守るのが、私の使命だった。
しかし、大勢の同胞を殺めてしまった今、私は同胞への償いの為、復讐鬼となって信長の命を獲らねばならぬ」
「それは違うと思います。貴方が生きて、門徒のかたがたを導くのが一番必要な事ではないですか?」
優しすぎる貴方、それ故、つらい生き方を選択するしか術(すべ)を知らなかった貴方。
「…おじょうさん、もう、ここに来てはならぬ」
「何故ですか?私は貴方が生き方を変えてくださるまで、何度でもお話ししたいです」
「今以上おじょうさんと会うと、私がつらくなるのだ…」
闇色の目がじっと舞を見つめる。
その奥にごくごくほのかな熱情が揺らめき、しかしそれは叶えられぬ顕如の想い。
「かんにんな、おじょうさん」
顕如は言って、舞に背中を向ける。
「…おじょうさんじゃありません、舞です…」
涙を堪えて舞は自分の名前を告げる。
その声に顕如は振り向き、舞の顔を見、そして牢の格子に近付き、舞に触れる。