<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第6章 分かれ道 ― 姫&顕如 ―
後悔したくないから、舞は信長にお願いをした。
「顕如様に会わせてください」
その願いに、信長は厳しい眼差しで舞を見る。
「どうしてだ?」
「あのかたはとても心の優しいかたです。あのかたが門徒のひとたちを使って、信長様を殺めるなんて、どうしても納得がいかないのです。だからお話しを伺いたいのです。お願いです、信長様」
信長は舞をじっと見つめ、やがて許可をする。
安土城の中にある地下牢へ足を踏み入れる。
すえた匂いのする暗く冷たい寂しい場所で、その人は闇色の眼差しで舞を見る。
「いったいこんなところに何用だ、おじょうさん」
暗い悲しみを湛えた表情を変えず、その人は舞に言う。
「…門徒のかたがたに信長様を襲うのを止めさせてください。それが出来るのは、貴方だけです、顕如様」
「私は何もしていないし、する気もない。私は現世で彼等の罪をかぶり、業火に焼かれる所存だ」
舞の願いを撥ね退け、その人の息詰まる言葉に舞は胸苦しさを覚える。
「何故、そんな悲しい事を言うのですか?貴方を慕った門徒のかたがたに、苦しい想いだけをさせるつもりですか?貴方がいつか、ここから出て、門徒のかたがたを導く、そういう想いはないのですか?」