<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第58章 一途な愛 ― 謙信&姫 ―
俺が舞の顔を見ながら少し笑みを浮かべると、舞は勿論です、とぎゅっと俺の手を繋いでくる。
「謙信様、お誕生日おめでとうございます」
改めて舞の柔らかく美しい笑顔が俺の心を奪う。
それから、小さな暖かな手が俺の冷たくなった手をほんのり覆い、そこからゆっくりと冷たくなった自身の疑いの心も溶かされていくようだった。
「舞が来るか心配だった…」
歩きながら俺がぽつりと言うと、驚いた顔をした舞が俺の顔を見上げた。
「どういう事ですか…?」
「…俺は舞が安土の者達に気に入られているのを知っている。だから舞はいつか、俺より長く一緒にいる安土の者達と暮らす事を望むのではないか、と、だ…」
「そんな事ないですよ、私は謙信様のものです」
立ち止まり舞は俺の両手を自分の両手で握り、俺の顔を見上げて真剣な顔をして言う。
「俺は舞と毎日を共にしたいのだ…春日山に来るのはまだ無理か?」
舞の気持ちはわかるが、俺も一刻たりとも舞から離れたくないのだ。
「私は世界で一番、謙信様を愛してます。でも、まだ安土の皆さんへ恩を返せてないのです。
だから、まだ待っていただけませんか?」
苦しそうに言う舞に、俺は無理を言ってしまった事を後悔する。
「…すまない、舞を苦しませてしまったな…」
俺は舞を抱き締め、謝る。