<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第58章 一途な愛 ― 謙信&姫 ―
安土に来る楽しみは、恋仲になった舞に会う事。
それまでは酒と、絡んできた酔客の相手をして叩き斬る事を楽しみにしていた。
舞に会い、俺は伊勢姫の呪縛から解かれ、舞を愛する事が出来るようになった。
伊勢姫のように舞も死んでしまうのではないか、そう思うと舞のまっすぐな愛を受け入れるのが怖くてならなかった。
しかし、舞、おまえは俺に向かって自分は死なない、と言ってくれた。
俺を救う為、俺を呪縛から放つ為、舞は命の際で生きる俺に、ちからいっぱいの愛を注いでくれた。
おかげで俺は目が覚め、生まれ変わって舞の愛を受け入れ、俺自身が持つ舞への愛を自覚する事が出来た。
「謙信様!」
待ち合わせの橋のたもとにいると、舞が下駄をカタカタ言わせながら走ってくるのが見えた。
俺は走り寄る舞のからだを抱き留めると、舞は満面の笑顔を俺に見せた。
「お待たせしました、だいぶ待ちましたか?」
俺の手に触れ、驚く舞は俺の片手を両手で包むように握り、自分の口元へ持って行きはぁっと息を吹きかけた。
「ごめんなさい、だいぶ待たれたんですね、すごく手が冷たいです」
「これくらい大丈夫だ。舞が手を繋いでくれるなら、な」