<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第48章 さんりんしゃ ― 光秀&姫 ―
佐助とは、上杉謙信についている無表情な忍びの男か。
まきびしだけ作っているのかと思っていたが、さんりんしゃとやらも作れるのか。
「それはおまえが乗るにはだいぶ小さく見えるが?」
俺が腕組みをしながら問うと、そうなんです、と舞は答えた。
「何せこども用ですからね」
舞はさんりんしゃから降りると、こどもを連れて来てそれに乗せた。
確かにそのこどもが乗るには、ちょうど良い大きさだ。
「ここに足を乗せて、ね、はい、踏み込んで進ませるよ」
ほう、足をおいたところを自分のちからで回して、前へ進ませるのか。
なかなか斬新な乗り物のようだ。
「何故おまえが乗れる大きさにしてもらわなかったのだ?」
俺がごく当然の事を聞いたら、舞が残念そうな顔をして言う。
「おとなが乗るものになるとかなり大きくなるんですよね。そうなるといくらなんでも佐助くんでも作れませんよ」
成程、こども用が精いっぱいという事か。
「でもおとなでも乗れない事はないんですよ?さっきの私を見たでしょう?」
思いついたといった体でぱっと表情を変え、舞は俺を見やった。
「だから、はい、光秀さんも乗ってください!」
「乗らん。こんな小さいのには乗らんぞ」