<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第44章 愛のお仕置き ― 信長&姫 ―
「農作物はな…俺が桶狭間で今川を破った時の天候はもっとひどい雨だった…」
俺がぽつりと回想すると、舞は、はっとして俺を見た。
「周りが全く見えない雨の中、俺は今川へ小隊を突っ込ませた。そして完全に油断していた今川は逃げ惑うばかりで、面白いように俺達に切り刻まれていったのだ」
息を呑む舞に、俺は続けた。
「今川義元の首も獲ったはずだったが、あやつ、身代わりを仕立てて、自分は安全なところへ逃げていたのだ」
だから、義元は今も生きていて、時々安土へふらりと姿を見せ、その容姿から町娘たちを翻弄していき、更にあっという間に姿を消すので捕らえに行った時にはもういないのだ、と忌々し気に俺は舞へ言った。
「だから貴様は、今川義元に会ったらすぐ俺達に伝えろ。おかしな事はするな」
はい、と舞から素直な返事があった。
しかしこのおんな、俺の言う事をしょっちゅう忘れるのか、危ない事に顔を突っ込む事が多い。
その都度、俺から仕置きを受けるが、最後は結局悦んでいるので、あまり仕置きになっていない、と俺も認識している。
このおんなにわからせるにはどんな仕置きが良いのだろう?
俺は横に立つ舞の顔をちらりと見下した。
俺と視線があった舞は少し顔を赤くして、俺に問う。
「なん、ですか?信長様…」
「貴様に仕置きをするには、どのような内容が効くのか考えていた」