<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第44章 愛のお仕置き ― 信長&姫 ―
今日は朝から雨。
天守から見える遠くの景色がけぶり、全ての色が灰色と化している。
「…信長様、冷えますよ?」
舞が中から声を掛けるが、俺はそのまま外を見つめていた。
俺が中に入らないから、舞は俺の羽織を片手に出てきた。
「信長様、こちらをどうぞ」
舞は後ろからぱさりと羽織を俺に掛けて、俺の横に並んで雨もよいの外を眺める。
「…何をご覧になっているのですか?」
舞は俺が何が楽しくて外を見ているのかわからないようだ。
「貴様、雨が降ると、俺が何を思い出すかわかるか?」
俺の問いに、さぁ、舞はどう答えるか。
案の定きょとんとした舞は固まり、どう答えて良いか困ったように思えたが、しばらくして言った。
「恵みの雨と言います」
ほう、言い得て妙だな。
「農作物において、雨が降らない水不足では稲や苗は育ちませんし、反対に降りすぎても農作物の根がやられて稲や苗自体が駄目になってしまいます。だから適度に降る雨なら恵みの雨、でしょうか…」