<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第37章 最高のプレゼント ― 顕如&姫 ―
ふくいくとしたワインの香りが二人の間に飛び交う。
「いい香りのワインですね、口当たりもとても良いです」
乾杯の後、こくりと飲んだ舞が自分の感想を述べる。
知ったかぶりでワインの知識を広げてくる人物がたまにいるが、みっともない。
舞のように素直に自分の言葉で伝えれば良いのだ。
顕如はそう思いながら、ワインを口にする舞の姿を穏やかに見つめた。
食事が終わり、デザートとコーヒーが運ばれてきた。
デザートは顕如には、舞と同じものの他に、もう一品付けられていた。
シフォンケーキに、チョコレートで『顕如様、お誕生日おめでとうございます』と書かれた小さなプレートが付けられていた。
「ほう、これは…」
「私が作ったのを持ってきて、お店にお願いして、デザートのお皿に乗せてもらったんです」
舞はいつも可愛いハプニングを仕掛けてくる。
そのハプニングが嬉しい顕如だが、もともと表情があまりはっきりしないところがあるので、嬉しくても嬉しいとなかなか伝わらないところがあった。
「舞、ありがとう。とても良い誕生日だ」
しかし顕如は心から伝えると、舞も心底嬉し気な顔をした。