<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第34章 だんらん ― 女中頭三姉妹 ―
「秀吉様だって奥方様をお迎えして良い年齢でいらっしゃるのに、未だお一人身。だから私は、今、御殿で預かっている葉月さんの面倒を見ているわよ」
「葉月さん?」
梅がそれはどなた、といった体で聞く。
「ここのお茶屋で働く娘さん。事情があって秀吉様の御殿で預かっているのだけど、そのうち秀吉様の養女になって、三成様のところへ嫁ぐ予定になってるのよ」
「あら、それは竹さんもお世話のし甲斐があるわね。ご婚儀の支度も手伝う事になるのでしょう?」
松が聞くと、竹は頷く。
「秀吉様に奥方様がいらっしゃらないからねぇ。早く舞様のようなかたとご一緒になっていただきたいものよ」
すると、その、葉月がひょっこり茶屋の奥から顔を出した。
「あ、やっぱり竹様。お声がしたからそうかなって思いました。ちょうど良かった、新しいお菓子が出来たところなんです。試食してもらえますか?」
「し、しょ、く?」
「あ、えーと、他の人に食べてもらって感想を伺う事です」
ついっとからだをひっこめ、しばらくすると白く小さく丸めた菓子を皿に乗せたものを運んできた。
「餅菓子です。感想聞かせてください」
そう言って、3人に皿を渡した。
さらりとした雰囲気と、舞程ではないけれど美しい部類には入る顔だちと、松と梅は観察し、町娘の割りにきちんとしているなと思う。