<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第34章 だんらん ― 女中頭三姉妹 ―
「遅くなっちゃった。ごめんなさいね」
普段、皆に立ち居振る舞いを注意している立場の松が、小走りで向かってきた。
「遅いわよ」
竹がくすくす笑いながら、でもすぐ茶屋へ声を掛け、お団子とお茶を注文した。
「悪かったわよ…だって、ややさまが産まれたばかりでね、奥方様もまだまだからだが完全にお戻りではないのよ」
「ああ、光秀様にお二人目が産まれたのですよね。おんなのこでしたっけ?」
三姉妹の一番下、梅がお団子とお茶を受け取り、松へ渡す。
「ええ、奥方様そっくりなお顔立ち。上の花月(かづき)様同様、きっとお年頃には目の覚めるような美人になられるわよ」
ありがとう、と梅からお皿を受け取り、松は座って、赤子を思い出し微笑んだ。
この三姉妹の名前は、上から、松、竹、梅。
全員武将の御殿で女中をし、年も年だけあって女中頭として、働くおんなたちを統率する立場だった。
松は明智光秀の御殿で働いている。
光秀は、信長お気に入りの姫舞を娶り、今は4歳になる花月という娘と最近産まれた舞そっくりな姫がおり、松は花月とそのややこの世話をしているという。
「松ねえさんはややこの世話が出来ていいわねぇ」
竹がしみじみと言う。