第7章 『謳歌』 ※R‐18
「………………」
「………………」
カチャカチャと器に箸が当たる音だけが響く朝餉風景。
カップルが放つ重苦しい空気が場を取り巻く中、見兼ねた信玄が口を開く
「二人共……何があったかは知らないがその険悪な雰囲気かれこれ十日目だぞ。どうにかならないのか」
「「なりません」」
「はぁ………」
額に掌を当てる信玄を尻目に食事を終えた桜子が立ち上がった
「じゃあ、ちょっと出掛けてきます」
心なしか怒りのこもったような足音で障子の外へ消えていく。
「………………………」
全員の視線が幸村へ注がれる
「……またかよ。この感じ、前にもあったぞ……」
(俺は悪くねー!)
バン、と乱暴に箸を膳に置いた
そして
朝餉のすぐ後ーーーーー
高らかに笑う声が信玄の自室にこだまする。
「何がそんなに可笑しいんですかっ!」
「い………いや、甘酸っぱい喧嘩理由だなって………くっ」
赤面する幸村の前で信玄は腹を抱え笑いを抑えきれずにいた
「ははっ、やっぱり天女は可愛いなぁ。手繋ぎたくて怒るなんて」
「俺は人前で手なんか繋がない主義なんで。格好わりぃ」
「相変わらずだなぁ、お前は。…………だが」
ひとしきり笑ったのち、スッと真面目な顔になったので
幸村も姿勢を正す
「“現代に帰れ”はいささか言い過ぎなんじゃないのか」
「それは言葉のあやで………っつーかあいつが余計な事言うから……」
「……幸。お前はどういうつもりであの子と今の関係を続けてる?あの子は家族や友人を捨ててまでここに残る気でいるんだ。ただの遊びだったらーーー」
「遊びじゃねーよ!」
シン、と静まり返る
思わず怒鳴ってしまった気不味さから、
下を向きごにょごにょと話を再開する
「……ゆくゆくは……その、ちゃんとしたいと思ってるし……」
ふ、と信玄は目を細めた
「そう思ってるならさっさと仲直りして可愛い我が儘ぐらいきいてやれ。……じゃないとそのうち取り返しのつかない事になるぞ」
「………………」
幸村は落としていた目線を前方に戻すと腰を上げ襖に向かった