第7章 『謳歌』 ※R‐18
春日山城内をドカドカと闊歩する、
目が据わった女ーーー
行く先には佐助と立ち話している先程の喧嘩相手が見えた
「あ、桜子さん帰ってき……」
「ただいま、佐助」
そう言うなり自分の手に指を絡ませ身体を寄せる桜子に佐助は硬直した。
ピクリと幸村の眉が上がる
「おま、何やって……」
「ねーえ、佐助~。私がこうしたら嬉しい?嫌?」
こてん、と肩に頭を乗せ上目遣いをする姿に心臓が鳴ったが冷静を保つように咳払いをする
「桜子さん……一杯引っかけてきたでしょ」
「え~っ、バレたー?」
きゃっきゃと笑ったかと思いきや急に真顔になり、幸村に人差し指を向けた
「この男はねー、私がこうすると嫌なんだってさー。佐助はどう思うー?」
「……桜子さん……もう部屋に戻って寝なよ。俺怖くて今、幸の顔見れない」
やんわりと離すと、ふらふらと男二人の前を通り過ぎ
舌を出して去っていった。
怒りのオーラがひしひしと斜め後ろから伝わってくるが、明後日の方向に顔を背けている佐助の首にガシッと腕が回され幸村の鬼の形相が迫る
「……おい、なに若干トキメいてんだよ」
「痛い痛い!気のせいだって!絞めるなって!」
腕から脱出し眼鏡を整えると、大きく息を吐いた
「……こんなに嫉妬丸出しなのによく“帰れ”だなんて言ったね………本当に居なくなったらどうすんの」
「どうせ帰る訳ねーって。あいつが悪ぃんだって。頭冷やしたらそのうち元に戻んだろ」
「そうかなぁ……」
しかしその後一向に“そのうち”は来ず、
日にちだけが過ぎていった