第7章 『謳歌』 ※R‐18
「う~ん………」
朝ーーー
気だるいなかムクリと褥から上体を起こす。
隣では幸がまだ眠っている。
(珍しく私の方が先に目、覚めたな)
今日は私の部屋で一緒に寝た。
桜子はそばに脱ぎ捨ててあった寝衣を羽織り
鏡台の前に座った
つ……、と首筋や胸元にある印を指でなぞる
付き合い出してから数ヶ月経った。
夜寝る時も朝起きる時も
仕事の合間も共に過ごしてる。
この上ない幸せ
……………なんだけれど。
ひとつだけ不満があるとすればーーーーーー
「嫌だ。」
「なんで?いーじゃん」
「い・や・だっつってんだろ」
その日の午後、
城下を歩く二人は押し問答していた
(……なんでこんな頑なに嫌がるんだろ。二人だけで居る時は割とベタベタしてくるのに……)
幸は、人前で決して手を繋いでくれない。
最初は「照れてるんだなぁ」くらいに軽く受け止めてたのだが、
段々気にするようになっていった
手を繋ぐ以外にも、
例えば屋敷で皆といる時にーーー
『政務お疲れ様~!』
そう腕に抱き付いただけでも
『そーいうの、後にしろよ』
って離されちゃうし。
何度かやり続けてたら終いには無言で引き剥がされるようになった。
(なんだか、淋しい……)
ちょっとくらい、人前でも仲良くしたっていいのに。
横を歩く幸村を桜子はキッと見上げると、
無理矢理手を握った
「…………」
ぱっ、と振り払われる
我慢してたものが切れ、頭に血が昇るのが自分でも分かった
「なんで?なんで駄目なの!?」
「しつけーな。こんな大勢の前で出来るかって」
「固い!頭固すぎるよ幸はっ!」
声を荒げながら言うと、
幸村が深い溜め息をついた。
「面倒くせーな。いい加減にしろよ」
(面倒臭い………?)
肩を震わせ、唇をギュッと噛んだ